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「DESIGN PROJECT : 工芸」ジャパンクオリティからの学びと新しいジュエリーの提案

日本のものづくり。
かつてない速度で暮らしのあり方、物の価値観が変化する時代にあって、世界から注目をされている日本の職人技や伝統産業界の知見は、私たちに多くの学びと新しい気づきをもたらせてくれます。
大阪校が置かれている近畿圏の地域が育む、伝統技術や伝統工芸の産地へ、6グループに分かれた学生達が自らアポイントメントを取り、足を運んでリサーチしながら行う「DESIGN PROJECT : 工芸」のプログラムは今年で2年目となり、先日、今年度の最終プレゼンテーションを終えました。

対象学生は大阪校クリエイティブジュエリーコース3年。8月末から12月上旬にかけて企画デザイン、制作とプレゼンテーションを実施。職人の皆様、生産者の方々の想いや、改善点をグループメンバーで見つけ出し、作り手やマーケットをリサーチし、ターゲットを考えて1本の軸に通す。どのように商品に落とし込み、どのようにどこで売るのかまでを企画しました。

「社会の中で価値あるデザインをつくるためにはどんな視点が必要か。」生産者様、職人の方々、そしてクラスの仲間と共に試行錯誤しながら、デザインによる課題解決の方法を様々な視点からリサーチし、ジュエリーという新しい価値観で提案するプロセスを学ぶデザインプロジェクトです。

特別講師として、様々な伝統工芸や伝統産業とのイノベーションをされている合同会社シーラカンス食堂代表 小林 新也様(以下詳細)をお招きし、セミナー、途中経過のアドバイス、最終発表会のフィードバックをいただきました。

小林 新也/Kobayashi Shinya : 1987年、兵庫県生まれ。シーラカンス食堂およびMUJUN代表。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、2011年にシーラカンス食堂を地元の兵庫県小野市に、16年にMUJUNをオランダアムステルダムに設立。播州刃物を中心としたブランディングや商品開発、世界市場へ向けた地域財産の販路開拓などに取り組む。播州刃物の取組が2015年GOOD DESIGN BEST100受賞及びものづくり特別賞を受賞。18年に継承者育成を目的とした工場「WORK SHOP」をオープン、連動して19年、新プロダクト「富士山ナイフ」をリリース。また、同年注目すべきイノヴェイター選出し、世界に向けて紹介している「WIRED Audi INNOVATION AWARD 2019」受賞

8月24日(月)小林様によるセミナー
各グループ、2〜4つの生産地へリサーチ。生産者の方や作り手の想いを汲み取りながら、
ジュエリーへの可能性についてプレゼンテーションを行いました。
小林様による全体に向けての総評
6グループのプレゼンテーション終了後、個々でこのプログラムで学んだこと、感じたことを参加者全員で共有する時間を設けました。

コミュニケーション能力の重要さを感じるとともに、チームのメンバー同士で知識やアイデアを共有し、物事をみる角度が増えることで、「新しい発想が生まれる実体験 ができたことに喜びを感じることができた。」 という意見が多く見られました。

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ここからは6グループの研究成果についてご紹介します。

Aグループ……ブランド名:寄り良い
〜ジュニアとシニアの「異世代」へ向けた にじゆら様への二つのプロダクト提案 〜

「寄り良い」=better off 「今あるものよりもさらに良いものを」という意味のある造語です。にじゆら様の企業理念を元に、寄り良いでは、ジュニア向けには手拭いを、より日常に使いやすくするためのタオルホルダー。
シニア向けには、孫から祖父母へのギフトを想定した、ループタイ型手拭いアクセサリーを提案します。
「寄り良い」を取り入れることで、より手拭いをデイリーユースに、そしておしゃれに楽しむ生活をお届けします。ご協力:株式会社ナカニ様

Bグループ……ブランド名:illumira
〜ミラーボールの端材を用いたジュエリーの提案 〜
illumira = illuminate(照らす)× mirror(鏡) を意味します。
商業施設などの空間演出を目的に、「光る芸術品」として室内を照らすミラーボール。illumiraではその規則性のあるデザインを活かし、どこにもないモードでラグジュアリーなジュエリーを提案します。
「室内から屋外へ…。」光を照らすステージは室内から飛び出て、いつもあなたと共に。 ご協力:株式会社日照様

Cグループ……ブランド名:one dose
〜お茶の楽しさを知ってもらう為のジュエリー兼茶道具の提案〜
「日常的にお茶を楽しめるための提案」
日本の伝統的なお茶会を日常的に。お茶を点てることは相手をもてなす行為になります。この特別な時間を、簡単に楽しめるようなジュエリーの形を考案しました。one doseとは、「一回分」の意味します。
お茶を点てるために必要な1回分の量を身に着ける。
近年トレンドになりつつあるソロキャンプ愛好家をメインターゲットにデザインしました。山で、川で、野原で…。風景を楽しみながら「one dose」で日本の伝統文化の「お茶会」をカジュアルに楽しんでみませんか? ご協力:翠華園谷村弥三郎商店様

Dグループ……ブランド名:KI▶︎Re(キリ)
〜和モダンスタイルを好む欧米人に向けた桐のジュエリー〜
「桐に新たな息吹をもたらす」 ジュエリーの主材として用いたのは、日本の伝統工芸として指定されている桐箪笥の端材です。桐箪笥の最高峰と言われる泉州の田中家具製作所様を訪ね、桐箪笥を作る上で出てしまう端材をどうにか生かせないかという話がきっかけとなり、端材を提供して頂き、新しいジュエリーを生み出しました。昨今の若者のライフスタイルでは身近ではない桐箪笥。
しかし桐は木材として優れた点を沢山持った大変貴重な素材で、2年程の長い年月を経て、銀灰色の美しい木肌に変化するという大きな特質があります。自然からの贈り物である、伝統素材の「桐」を用いて、日常で楽しむ事が出来るジュエリーとして、桐の魅力をお伝えします。ご協力:田中家具製作所様

Eグループ……ブランド名:晶花
〜「Get Closer」あなたに近づく〜
日本の希少な伝統工芸である「花結晶」をつくり続けている陶葊(とうあん)様から頂いた、美しい磁器片を使ったジュエリーの提案です。私たちのテーマ「Get Closer」は、近づくという意味。伝統工芸や伝統技術が身近である着物をライフスタイルの一部としている消費者へ向け、晶花のジュエリーは「Get Closer」します。従来の食の分野を装う器であった花結晶が「晶花」として身体を美しく装います。晶花を通して、長く愛されてきた陶葊様の美しい伝統技術、文化を知り、生活の中で楽しむ存在になれれば幸いです。ご協力:株式会社陶葊様

Fグループ……ブランド名:星の森
〜星のきらめきを貴方のもとに〜
大阪府和泉市にある山月工房様より提供して頂いた和泉蜻蛉玉の端材を用いて生まれたジュエリー。
とんぼ玉の形によく見られる球体の形ではなく、窯でガラスの端材を焼成して作り出した新しい形。伝統技術や伝統技法で用いられた、山月工房様の限りある素材に新たな命を吹き込んだ新しい姿。「星の森」とは星の輝きを表現したオリジナルのネーミング。星が多く集まっていることを林に見立てた「星の林」という既存のワードから私たちの星々の輝きは”林では納まらない”という想いから名づけました。「星の森」の輝きでより一層、貴方を輝かせる、お守りのように身に着けて頂きたいです。ご協力:山月工房様

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〜終わりに〜

この授業を通して日本文化や伝統への関心がより深まったのはもちろんのこと、新しい技術や今まで触れたことのない素材をさらにブラッシュアップさせ、現在取り掛かっている卒業制作や、自主制作に取り入れる学生たち。また 今回のそれぞれ6つのブランド提案を終わらせることなく、引き継ぎながらより現実的な商品展開をしていって欲しいと実感しています。
2年目となった「DESIGN PROJECT : 工芸」を終え、より多角的な視点で伝統工芸や伝統産業との関わり方を学ぶことができました。
グループワークではありますが、個々が、伝統技術の背景にあるストーリーや、生産者様の想いを土台に、新しいモノづくりをしていく難しさとプロセスを学ぶことができたと感じています。

「ジュエリーでできることは何か?」社会連携活動を大きな軸として今後も教育へ繋げていきたいと思います。

授業最終日、講評会後に小林様を中心に囲んでの記念撮影

ご協力くださいました小林新也様、伝統産業の関係者の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

kitayama