循環
KENSHI WATANABE渡部 憲使
[ Brooch ]
[ Bone, Silver, Stainless steel, Copper, Patina ]
朽木を青く染めて分解するロクショウグサレキンというキノコが存在する。朽木は青く染められ土壌に還り、新しい命の糧となる。その先は植物から始まり、動物や人間へ。そしてそれらがまた朽ちていき土へ還る。この命の循環が、自然界に存在するこの青が、私は美しいと感じる。
ロクショウグサレキンによって染められた朽木。朽木に菌糸が張り巡り、色が着き、条件が整うと菌糸が集まり子実体（キノコ）をつくる。
モデルは「ロクショウグサレキンモドキ」。ロクショウグサレキンを銅でつくっても所詮「擬」なので、ロクショウグサレキンモドキをモチーフに選んだ。これが密集して蔓延っていく姿が骨のグロテスクさとマッチしている。
本体の素材には鶏の骨を使用した。食物連鎖で言うところの消費者である。モチーフにした枝木は生産者を表し、ロクショウグサレキンは分解者である。この骨は私が食べたチキンの残骸であり、木の形を作ったのも私である。人間は人にとって都合のいい環境を作り続けていく。人間が地球全体に及ぼしている大きな影響を忘れてはいけない。